【真実】外国人風カラーをしたあなたがパーマを断られる理由と、不都合な裏話

あなたは間違っていないと思います。美容業界は「ビジュアルイメージ」の持つ影響力と「宣伝(集客)」との相性が良いため、「インスタ映え」の活用が集客にはとても効果的です。
でもインスタグラムに限らず「パーマで再現できないヘアスタイル」を宣伝用のヘアスタイルで利用して集客し、実際に来店したらあれこれと理由をつけてパーマを断る、というのが20年以上前から常態化しています。
もちろんそんな悪質な宣伝をしない美容室もたくさんあるのですが、見栄えのいい「宣伝用のイメージヘアスタイル」と「カットカラーパーマで、実際にお客さんが再現できる前提でのヘアスタイル」は違って当然、という考え方の美容室もあります。
美容業界における「インスタ映え」の裏側も踏まえて解説していきます。
外国人風カラーをするとパーマを断られる理由
外国人風カラーをすると美容室にパーマを断られる理由は4つあります。
①パーマが失敗する確率が高いから
ダブルカラーが必要なハイトーンの外国人風カラーを施した髪の毛は、パーマをかける難易度がとても高くなります。
特に今の若い美容師の人は「失敗」を極度に怖がる世代のため、失敗の確率が高いパーマをやりたがらない傾向にあります。
②ブリーチをした髪に対応できるパーマ技術を持っていないから
突き詰めて研究していく必要はありますが、、ブリーチをした髪の毛でも対応するためのパーマ技術は存在します。
でも、どこの美容室でもブリーチをした髪にパーマをかけるノウハウを持っているかというと、決してそうではありません。
③コテでスタイリングしたヘアスタイルを、美容師がパーマで再現できないから
前項とつながる内容ですが、コテを使って自由自在にスタイリングができるスキルを持っている美容師が、同じことをパーマで再現できるかというと、それはまた別問題です。
パーマをやりたがらない若い世代の美容師が増えているのが美容業界では問題になっていますが、やらないものは上達しません。
パーマの失敗をリカバリーする方法とは、パーマを失敗することでしか身に付くことはありません。
つまり、パーマをかけるスキルが低い美容師が増えているとも推測されます。
④パーマの仕上がりの見栄えが、コテのスタイリングに見劣りするから
たとえぼさぼさした髪質でも、美容師が仕上げでドライヤーでのブローと、高温のコテを使ってスタイリングをすれば、きれいな見栄えに仕上げることができます。
でもパーマだけで仕上げる場合、高温のコテで巻いたカールやウェーブには、ツヤや質感など「見栄え」の面で劣ります。
つまり、インスタグラムにアップできるような見栄えにならないためにパーマを断りたがる、という美容師側の心理もないとは言い切れません。
美容師は「ケアブリーチした外国人風カラー」になぜパーマをかけようとしないのか
理由は簡単で、パーマがかからないからです。「ケアブリーチ」は髪のダメージが少なくなるブリーチだと宣伝されていますが、実際はどうであれ、ケアブリーチを繰り返した髪の毛にパーマはうまくかかりません。
つまり、ケアブリーチは髪が傷まないというわけではなく、髪が傷んでいるように感じにくい仕上がりになるものだということです。
パーマをかけたがらない美容室が増えている理由
アンケートを取ると、パーマをかけてみたいと思っているお客さんはおよそ60%前後います。
それに対して、全国の美容室のパーマ比率(パーマをかけるお客さんの割合)はなんと10%台です。
この数字の差を生み出している要因は、「美容師がパーマを提案しない」ということの他には「美容師がパーマを断っているから」という以外に理由が考えられません。
美容室業務の効率化・自動化によって失われるもの
本来であれば、カットカラーに加えて、お客さんにパーマもやってもらったほうが売り上げは上がるはずです。
しかし近年、世の中ではどの業種でも業務の効率化を図るため、業務内容の「自動化」「システム化」を徹底するという流れが大変強くなっています。
他の業界に比べると「仕組みが古い」と言われる美容業界ですが、業務のシステム化の波は美容室の業務内容にも影響を与えています。
美容室の利益(数字)を上げるということだけに特化した場合、パーマメニューははっきりって邪魔になります。
効率的に回しやすい「カットカラー+トリートメント」に徹した方が美容室の売り上げは上がりますし、美容師の仕事もパターン化しやすくなります。
例えばデジタルパーマを行おうと思ったらデジタルパーマ専用の機材を導入する必要がありますが、一つの機材で同時にかけられるのは最大でも2人までです。
そのため、デジタルパーマの予定があるだけで、他の仕事を調整しなければいけないことになります。
特に大きな美容室の場合ほど機材の導入コストが膨れ上がり、非効率化の影響は更に顕著になります。
つまり、大きな美容室ほどパーマを積極的に推すと利益を生み出しにくく、業務の効率化を妨げるため、割り切ってしまうならば「パーマメニューを消してしまった方が良い」という結論にもなりえます。
私自身はこのような考え方は好きではありませんが、業務を効率化して美容師の仕事を簡単にし、利益の追求に徹するのが美容ビジネスでの正義なのであれば、それが正解なのかもしれません。
外国人風カラーの髪に「外国人風ウェーブ」をセルフスタイリングさせる人気美容室
こういったいきさつもあって、外国人風カラーを打ち出している人気美容室は、パーマをかけることに対して消極的です。
でも依然としてインスタグラムでは見栄えの良い外国人風カラー、外国人風ウェーブの髪型が圧倒的に若い女性の反応を取ることが出来ます。
そのため、人気美容室はパーマをかけない代わりにお客さん自身にコテでスタイリングする方法を「丁寧に教える」ことで対処しています。
とはいえ、根元まで波打っている髪型を、自分でコテで巻いてスタイリングするのは大変な作業です。
若い女性は髪のスタイリングに手をかけるモチベーションが高いので、それでも何とか続くとは思います。
でも、年齢とともに必ずそのモチベーションは低下しますし、そもそもパーマとは、忙しい朝に自分でコテで巻いたりしなくても良いためにかけるものなのではなかったのでしょうか。
一体いつからコテで巻いてスタイリングをしなければいけないのが「常識」になったのでしょうか。
ポリッシュオイルやバームを塗ってからコテで巻く美容師は、髪の傷みに無頓着
2018年は「ナプラ」というメーカーの発売する「エヌドット ポリッシュオイル」という製品と「エヌドッド ナチュラルバーム」という製品がスタイリング剤で大ヒットしました。
人気美容室の中には、これらのスタイリング剤を乾いた髪にたっぷりとつけてからコテで巻く、というスタイリング法を推奨している美容室もあります。
ですが、それにも実は隠れた問題点があります。例えばポリッシュオイルの第一成分は「ごま油」です。
ごま油は非常に酸化しやすい部類の油なので、それをつけた髪の毛に高温のヘアアイロンを当てるということは、髪の毛に「油分の酸化ダメージ」を与えます。
ただでさえブリーチやダブルカラーで傷んでいる髪の毛に、さらに追い打ちをかけるようなやり方です。
そんな問題だらけのスタイリング方法を推奨している美容室に、ヘアケアの知識が十分にあるとは全く考えられません。
本来であれば、美容室の業務ではヘアデザインの副産物として起こる「髪の傷み」は同時に回収しなければならないものです。
インスタ映えする外国人風ヘアは「その場限りの作品」
これまでに述べたような背景があって「インスタ映えの良い、外国人風カラーの外国人風ウェーブ」という画像や動画コンテンツが出来上がっています。
つまり、パーマで再現できないようなヘアスタイルを使って集客・宣伝しているというのが今も昔も、一部の人気美容室の実態です。
「あなたの髪質とモデルさんの髪質は違うから、このヘアスタイルは無理」と言って断るのは、大昔から美容師の使う「断りの常套句」ですが、最近の「インスタ映え」の過度の追求は、さすがに度を越しているのではないかと感じる時があります。
我々美容師は、いつの時代でも「ヘアメイクの人が創る作品」と「お客さんが普段、自分でスタイリングする髪型」を近づける仕事を要求され続けています。
もちろん、それが叶えられればそれに越したことはありませんが、技術やヘアケア製品、パーマ液、カラー剤などの性能は、それを叶えるのに現状では追いついていません。
お客さん自身が「自分で再現できないビジュアルイメージ(髪形)」で宣伝して集客をするのが常識になっている美容業界自体にも問題がありますが、後は個々の美容室のモラルの問題なのではないかと思います。
まとめ
- 外国人風カラーをした髪でパーマを断られるのは、髪が傷みすぎていてうまくパーマがかからないから
- ダメージが少ないはずの「ケアブリーチ」を使って外国人風カラーをやっても、パーマがかかる髪にはならない
- 美容師がコテで自在に髪形を作れる=パーマも同じようにできる、ではない
- 効率重視の美容室にとって、パーマは「邪魔」な存在
- 「コテで巻いてスタイリングするのが常識」なんて誰も決めていない
- そもそも本来のパーマの役割とは、コテで巻いたりしなくてもいいためにかけるもの
- 酸化しやすい油分を大量に髪につけて高温のコテで巻くと、髪に酸化ダメージが蓄積する
- 現状の美容室現場は、「ヘアメイクの創る作品」をお客さんが毎日自分で再現するために必要なもの全てを提供できていない