ミソフォニアとHSPの明確な2つの違いと、全20項目の感覚比較表。歴34年の専門家が対処法の違いまでわかりやすく解説。

「音に過敏な反応をしてしまってストレスを感じる」という共通点もあることから、違いの分かりにくいミソフォニアとHSP。
似ていることも多そうな2つの特性の、明確な違いとはいったい何でしょうか?
実際にミソフォニアとHSPで決定的に違うのは、極端な憎悪感情の有無にくわえて先天的なのか、後天的なのかといった違いです。
HSPは先天的で、気質的に良心的な人が多く、他人のことを考えすぎてしまうが故の疲れやすさに悩まされます。
ミソフォニアは先天的な原因だけではないことに加えて、不快な音を出す相手が無性に憎く、思いやりどころか怒りの感情を抑えることで手一杯です。
今回はミソフォニアとHSPの具体的な違いや類似点について、ミソフォニア歴34年の専門家がくわしく解説します。
もくじ
ミソフォニアとHSPについての基本的な前提知識
ミソフォニア(音嫌悪症)は単に「音が気になる」というだけではなく、特定の音(トリガー音)に対して条件反射的に身体のこわばり(筋収縮)と激しい憎悪感情をいだく状態です。
それに対して HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)は、あらゆる刺激に対しての感受性が強すぎるせいで、極端に疲れやすい人のことを意味します。
HSPが「生きづらさ」を感じやすいことに対して、ミソフォニアはトリガー音を聞くやいなや、殺意のような負の感情とともに罪悪感を感じる衝動性の強い反応です。
また「HSPの中にミソフォニアが含まれる」と説明するサイトもありますが、ミソフォニアとHSPは切り離して考えるほうが、分類としてはより適切と考えます。
後の項目でくわしく説明しますが、HSP型と非HSP型のミソフォニアが存在するからです。
他人から見て、ミソフォニアとHSPはどのように違って見える?
周囲の人が見た時には、HSPの人は繊細で思いやりがある人だと捉えられやすく、ミソフォニアの人は(悲しいことに)短気で独りよがりな人に見えます。
また、HSPが生まれ持った「気質」であるのに対し、ミソフォニアは後天的な要因もあわさることで発現する症状です。
「普段は穏やかな人なのに、音のことになると人が変わったように激しく怒る」といったように、ミソフォニアの人は憎悪感情を引き起こす明確なきっかけを持っています。
参考それぞれの特性から見た、ミソフォニア(音嫌悪症)とHSPの具体的な違い
ミソフォニアの人は、トリガー音を聞くと激しい怒りのせいで自分のことしか考えられなくなってしまいがち。
対してHSPの人は、常に周囲や他人からの情報へ過敏になっています。
言葉で説明するよりもわかりやすいと思うので、20項目の比較表をご覧ください。
HSP | ミソフォニア |
生まれつきの特性 | 遺伝要因×原体験×トリガー音 |
あらゆる刺激に対して敏感 | 特定の音や動作(トリガー)に反応 |
情報に過敏で疲れやすい | 感情が乱高下するストレスで疲れやすい |
感受性が豊か | 感受性が普通レベルの人もいる |
とても良心的 | トリガー音でキレると別人 |
痛みに敏感 | 痛みの感じ方は普通レベル |
騒音が苦手 | 騒音が必要 |
びっくりしやすい | 特性に当てはまらない |
多重タスクでテンパる | 特性に当てはまらない |
相手の気持ちを察しやすい | 憎悪感情が出ている時は、相手を加害者と思い込みがち |
ミスに対して過剰に気を遣う | 特性に当てはまらない |
暴力的描写が苦手 | 特性に当てはまらない |
生活や環境の変化で混乱する | 環境改善を積極的に求める |
繊細な香りや味覚・音楽などを好む | 特定の周波数のノイズで落ち着く |
動揺する状況を避ける | トリガー音を避ける |
騒がしい環境に不快感を感じる | 静かだと、トリガー音を無意識に拾う |
競争や観察されると緊張する | 特性に当てはまらない |
子どもの頃に「内気」と言われる | 子どもは「怒りっぽい」と言われる |
人の気分に左右される | トリガー音が原因で感情が激しく乱れる |
視覚・嗅覚・味覚・触覚も敏感 | 特性に当てはまらない |
ミソフォニアとHSPの具体的なケーススタディ
例えばサイレンの音や花火の音を聞いたとき、ミソフォニアは(トリガー音でなければ)特別な反応を起こしません。
それに対してHSPの人は、爆音に怯んだり、ビクっと反応してしまいます。
他にも騒がしい環境のなかでHSPの人はひどく疲れを感じてしまいますが、ミソフォニアは雑音がないと、トリガー音へ聴く神経を集中させてしまってストレスです。
また、カフェインの刺激に敏感なのもHSPの特性と言われていますが、ミソフォニアは刺激物に対しての過敏反応は特にありません。
2つの異なるタイプ・HSP型ミソフォニアと非HSP型ミソフォニア
ミソフォニアとHSPが混同して語られやすいのは、共通点や類似点が多くあるせいです。
実際は幼少期の気質から「HSP型のミソフォニア」と「非HSP型のミソフォニア」の2つに分類できます。
(『Understanding and Overcoming Misophonia, 2nd edition: A Conditioned Aversive Reflex Disorder』を参照)
タイプ1:HSP型ミソフォニア
幼少期に行儀が良く、いわゆる「礼儀正しい良い子」。HSPの特性である「非常に良心的で協調性がある」を持ち、タイプ2のミソフォニアと比較して情緒的に安定した傾向です。
ところが、このタイプの子どもがミソフォニアを開発してしまった場合は、より感情的な爆発を起こしやすくなります。
というのも、HSP型ミソフォニアは礼儀正しさ=規範意識が強いので、「~するべき」を守れない他人や自分自身に対する怒りと、ミソフォニアの憎悪感情を混同してしまうからです。
タイプ2:非HSP型ミソフォニア
いわゆる「わんぱく」「駄々っ子」の特徴をもつタイプの子ども。意志が強くて気分屋で、欲求不満を感情的に訴えることが多いワガママな気質です。
非HSP型ミソフォニアは規範意識が薄いので、意外と感情の爆発は起こしにくく、ミソフォニアの苦痛を我慢して、耐える傾向にあります。
Thomas Dozier氏がミソフォニアの子どもを持つ親へ実施した調査によると、36人中タイプ1のミソフォニアが21人、タイプ2のミソフォニアが13人。両方に当てはまる人が2人いました。
そのほかにも、第3のタイプ「SPD(感覚処理障害)型ミソフォニア」というものも存在します。
ミソフォニアとHSPで異なる、不快な刺激のブロック方法(対処法)
HSPが不快感から身を守るためには、敏感な知覚に対して過剰な刺激を与えないよう、保護する対策が効果的。
「聴覚の刺激」に関することだけで言えば、耳栓をつけたりノイズキャンセリング機能があるデジタル耳栓を活用する方法などです。
それに対してミソフォニアでは、一般的なノイズキャンセリングがあまり効果的でないケースが多々見受けられます。
ミソフォニアのトリガー音には突発的な音が多く含まれますが、一般的なノイズキャンセリングは生活での安全上、突発的な不快音は通す仕様になっていることが多いからです。
なのでミソフォニアが不快なトリガー音をブロックするためには、「無音の静寂」を目指すよりも、ある種の騒音を積極的に入れる対処法が効果的となります。
ミソフォニアのトリガー音への対処法については、別記事で詳しく解説します。
参考⇒ミソフォニアの対処法(作成中)
ミソフォニアとHSP 不快な音刺激で疲れてしまったあとの回復方法
HSPが情報刺激で疲労困憊してしまった後には、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚あらゆる知覚をリラックスさせる方法が効果的。
くたくたに疲れ果ててしまう前に、自分の身体に入ってくる情報を制限するのもHSPが自己防衛するために必要な対処法です。
(もちろん、リラックス法はミソフォニアで感じる脳の疲労感にも、回復効果が見込めます)
反対にミソフォニアは、長時間の耳栓などで音を完全遮断してしまうと、脳の働きにネガティブな影響が懸念されます。
脳とは情報認識に必要な知覚刺激まで奪ってしまうことで、正常に働かなくなってしまう可能性があるからです。
「ノイズのシャワー」は、ミソフォニアが憎悪感を強制終了させるテクニック
ミソフォニアが憎悪感情や怒りの無限ループに突入してしまった場合には、負の感情が思考停止するまで、大音量のホワイトノイズを浴びるのが効果的です。
必要以上に考えてはダメと分かっていても、憎い感情が延々とループしてしまって考えることを止められないのがミソフォニアの辛さ。
ミソフォニアは「パブロフの犬」と同様の「条件反射」を伴った反応なので、思考で落ち着かせるには強い精神力が必要です。
とはいえ、疲れている時は思考力そのものが落ちているので、「無」にリセットできる方法をなるべくたくさん用意しておきましょう。
ホワイトノイズに関する詳しいことは、別の記事で解説します。
⇒ミソフォニアに必要なノイズとは(作成中)
まとめ
- ミソフォニアは遺伝的要因×ストレスを伴った原体験と、音のきっかけで発現する
- HSPは、生まれながら持っている気質のひとつ
- ミソフォニアとHSPでは、「敏感」とひとことでまとめられないぐらいの違いがある
- ミソフォニアには2つのタイプがあり、HSP型ミソフォニアが存在する
性質や感じ方が異なれば、聴覚刺激に対する対処法も全く異なってきます。
基本スタンスとして、HSPは感覚の「過敏さ」からくる疲れを防ぐために、「守り」を固めること。
ミソフォニアはノイズを追加して、トリガー音から積極的に意識を逸らす対策が有効になります。
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