私の好きな小説②湊かなえ『贖罪』
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株)美テラシー代表
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美容情報の発信のほか、ビジネスコンサルタント業、セミナー講師業などをしております。
こんばんは、美テラシーの角谷です。
今回は小説アウトプットの第2回目、人気作家・湊かなえさんの『贖罪』でお届けします。
人が抱く「後悔」「後ろめたさ」という感情へ強くフォーカスが当たったこの作品からは、どんなアウトプットが生まれるでしょうか。
美容と全然関係ない投稿で恐縮ですが、ご興味ある方はぜひご覧になってください。
小説アウトプット:湊かなえ『贖罪』
人生に影を落とす、遠い過去の後悔。
それはまるで、何をしていても心から楽しめない「呪い」がかかったよう。
断片的な記憶は今しがた起こった出来事のように鮮明で、直視をためらわせるむごさが自我を圧迫する。
なぜあんなことになってしまったのだろう。
誰よりも光を放っていた存在が、なぜあんな形で失われてしまったのだろう。
考えても考えても真相の姿が見えないのは、後悔を共有している誰かが真実を隠してしまうから。
そういう自分だって、きっと真実を隠している。
誰にも言わなければ、これが真実だとすらわかりはしない。
でも、重荷を背負って生きていくのはそろそろ限界なのかもしれない。
いつでも美しすぎた惨たらしい死が、何をするにしても自分の足首をつかむ。

後悔でつながり続けていた輪からは、吐き出したくて仕方なかった事実がとめどもなく流れ出る。
後悔があったからこそ前に進めた人もいれば、贖罪意識の重みに押しつぶされた人もいた。
もう終わったことは終わったこと。
でもどこか引っかかることがあって、わずかに欠けたコーヒーカップの縁のように、唇に当たると安堵に浸れない。
触ってもわからないぐらいの微細な凹凸が、いつも脳裏に寄り添ってくる。
誰しもすべて見えているし、なおかつすべて覚えていない。
なぜか核心に近いものほど、記憶は引き出しの鍵を渡さない。
呪縛で疲弊した心は、これ以上の刺激を拒んでしまう。
たとえそれが、今までの息苦しさから自分を解き放つための唯一の方法だとしても。

互いに封印していた記憶の鍵を渡しあい、真相は驚くほど明白になった。
でもその真相は、また新たな惨劇を生む。
誰が悪かったわけでも、ないのかもしれない。
因果応報というひとことで片づけるには、後味の苦さがくどすぎる。
善行なんて所詮は幻想で、今この瞬間だけにある快楽。
誰かの犠牲があって、今の幸せは限定的に保証されている。
いつまでも続く安寧など誰も保証はしてくれないから、事実を見て無限の分岐をただ進む。