今は食品でも化粧品やシャンプーなどの美容製品でも、オーガニックやボタニカルなど、自然派イメージが強いものに人気が集中しています。農薬による健康への懸念など、食品に対して安全性を求める流れが美容製品にも移行してきた影響でしょうか。
ですがそもそも、オーガニックの認証規格にどれだけの種類があり、それぞれでどのような違いがあるのかをご存じでしょうか?なんとなく体に優しそうなイメージだから購入しているという方も非常に多いようです。
今回は世界基準となっている10個のオーガニック認証規格とそれぞれの違い、認証オーガニックとその他のオーガニックで何が違うのかを徹底解説していきますので、正しいオーガニックについての知識を深めましょう。
世界で認められている10のオーガニック認証規格
オーガニック認証は、有機栽培食品の製造を促進する目的と、消費者へそれが有機栽培された植物を使った製品であることを示すために定められているものです。個々の認証にはそれぞれ個別のサービスマークがあり、オーガニック企業は製品に対する付加価値を上げるためにオーガニック認証を用いることがあります。
各国でオーガニックの認定基準はまちまちで、どの認証規格がどこの国の、どのような認証なのかが大変わかりづらい状況です。ここでは世界トップ10の信頼性を持つとされているオーガニック認証規格について、実際にはどのようなものなのかを解説していきます。
- USDA有機認証
- 品質保証インターナショナル(QAI)
- ネイチャーの国際認証サービス(NICS)
- EUオーガニック認証
- SCSグローバル証明書
- 国際有機農業運動連盟認証(IFOAM)
- 有機材料レビュー協会(OMRI)認証
- カリフォルニア公認オーガニック農家(CCOF)認証
- エコサート認証
- コーシャ認証
USDA有機認証
USDA有機認証は、アメリカ合衆国の農務省によって認定された有機栽培食品に出される認証規格です。厳格な製造および分類要件に従った製品にのみ使用できます。
USDAの認証を受けたオーガニック製品は、USDAのオーガニック規制に従い、認定されたUSDAの認証機関によってのみ管理されます。
品質保証インターナショナル(QAI)
QAIは、USDAの主要なオーガニック製品認証機関です。USDAが有機栽培された食品(植物)そのものに対して使用される認証規格なのに対し、QAIは製品に対して出される認証規格。
少しややこしいですが、例えばオーガニックシャンプーなど美容製品の場合、QAIの認証が付いてくるでしょう。なおQAIは米国を拠点としていますが、米国、カナダ、EU、日本、ラテンアメリカなど、世界的に事業を展開しています。
ネイチャーの国際認証サービス(NICS)
NICSは、世界中の有機生産者に有機認証を提供するために設立された機関です。この認証サービスは、有機食品製造業者の実施とコンプライアンスを評価する能力において、USDAによって認定されています。
QAIと同じく、USDAの認証が前提となるオーガニック認証規格ですが、評価されるポイントが違う認証規格です。
EUオーガニック認証
名前通りのEU独自基準で認証するオーガニック認証規格。EUは、有機食品生産に対する厳しい要求と、有機生産チェーンのすべての段階でチェックを必要とする厳格な管理システムを実施しています。EU域外から輸入される有機製品には、EUが認める管理機関によって提供された検査証明書が必要です。
SCSグローバル証明書
SCS認証は、有機食品や製品に対する消費者の需要の急増に対応している、独立した国際認証サービスです。SCSは30年以上にわたって有機生産者と協力してきており、USDAの認定を受けた最初の機関の1つでした。
国際有機農業運動連盟認証(IFOAM)
IFOAMは1980年以来、世界的に有機規格を設定してきた非営利団体です。IFOAM認定は有機認証機関の中でも非常に高い基準を持った検証として、国際的に認められています。IFOAMは1992年に最初の有機認証要件を確立し、認証が多くの国や地域でどのように達成されるかを形作ってきました。
有機材料レビュー協会(OMRI)認証
OMRI認証は、有機環境で安全に使用できる製品(除草剤、肥料、殺菌剤、または土壌添加物)を認証することによって、消費者への有機食品および製品を提供する目的で作られた規格です。独自のOMRI認証マークは一般的にブランディング目的で使用されています。
カリフォルニア公認オーガニック農家(CCOF)認証
CCOFは有機食品と有機製品を認証し、教育と擁護措置を通じて有機市場の拡大に一生懸命取り組んでいます。CCOFは、有機製品を国際的に輸出することを望むカリフォルニアの有機生産農家のために作られた規格です。
エコサート認証
エコサートは公的機関ではなく、第三者として製品の検査および検証をするために作られた認証機関の出す認証規格です。Ecocertは、世界80カ国以上で検査を実施している世界最大の認証機関の1つで、この規格がゆくゆくはオーガニックの世界統一規格になるのではないかと予測されています。
コーシャ認証
コーシャ認証は、ヨーロッパと北米の大きなマーケットで非常に高く評価されている独立型の国際認証。この認証は特に、ユダヤ人が食べる食品に適していることを保証する、という目的の認証規格です。
認定オーガニックとその他のオーガニック、安全性はどう違う?
農産物、オーガニック製品ともに認定オーガニックのものとそうでないオーガニックのものがあります。その表示の違いと安全性はどのように変わるのでしょうか?
「100%オーガニック」と「オーガニック」の違いは何?
オーガニックとは本来、USDAのオーガニックプログラムの下で厳格に管理された農産物のことです。有機100%認証とは、製品中のすべての成分が有機栽培されているのが基準。Certified Organicと表示する場合、成分の95〜99%が規則に準拠している必要があります。
正確には、何が有機栽培の基準になる?
- 植物が合成農薬、除草剤、化学肥料、遺伝子組み換え、照射または下水汚泥で育てられていないこと
- 動物は有機飼料のみで飼育しなければならず、屋外に出入りでき、抗菌薬やホルモンを投与していないこと
- 生産者は、これらの慣行がその規約通りに従っていることを確認するため、定期的に検査されます。
なぜオーガニックが体に良いものだと定義できる?
これは、有機物というものをどのように捉えるかという概念に由来します。1920年代、イギリスの植物学者アルバートハワードはインドの農家を観察し、人間の健康が永続的なサイクルを持つ食料生産のシステムにかかっていると考えました。
インドの農民は、堆肥、作物の輪作、適切な耕作、そして生物学的害虫駆除を使って土壌の栄養素を保護することの重要性を彼に教えました。のちにこれらの方法は「有機的(organic)」と呼ばれることになり、それが有機(オーガニック)栽培という言葉の原点です。
しかし、現在のUSDAにおける「有機的(オーガニック)」の定義では、アルバートハワードが提唱した「食糧サイクルの重要性」については一言も言及していません。このギャップは、歴史を繰り返す中で概念に変化が生じたこと、またUSDA内での利権問題が深くかかわっています。
現在のUSDAの見解では、有機生産物(オーガニック作物)は単なる他との「違い」であり、作物の優位性を示すものではないというスタンスです。悲しいことに、USDA自身は特にオーガニックのプログラムで農産物を生産することを推奨していない、ということになります。
食品会社は「健康になる」と同義で「オーガニック」を使っている?
米国農水省が定める「オーガニック」では、法律上の規格としてオーガニックを使用しており、健康になることとは無関係との見解です。しかしながら、食品会社のマーケティングでは、より良い栄養素を摂ることができて、長期的に健康な体を維持できるものという打ち出し方をしています。つまり、オーガニックという表記によって製品の付加価値を上げ、販売価格を高くするための手段にしているということです。
例えばオーガニック原料のジャンクフードには合成農薬などは含まれていませんが、十分なカロリーはあるのでれっきとしたジャンクフードです。しかしジャンクフードであるにもかかわらず、オーガニックのジャンクフードの方が高く売れるという現実もあります。
農薬まみれの非有機農産物を食べるのか、まったく農産物を食べないのか、どちらが良い?
調査によると、果物や野菜を食べることによる健康上の大きなメリットが実証されています。まだまだ追加での研究が必要な内容ではありますが、これらの恩恵は農薬が使われた農産物のどんなリスクよりもまだまだ大いに上回っているので、農産物は食べた方が健康に良いでしょう。
妥協案としては、農薬が多い可能性が特に高い食品を避けるという方法も考えられます。具体的にリスキーなものとしてはEnvironmental Working Group(ewg.org)によると、モモ、ネクタリン、リンゴ、ピーマン、イチゴ、チェリー、ナシ、ラズベリー、輸入ブドウ、セロリ、ジャガイモ、ほうれん草です。
対照的に、皮をむく食べ物、例えばタマネギ、エンドウ豆、バナナ、スイートコーン、トロピカルフルーツなどは農薬が少なくなる傾向があります。
オーガニック食品は本当に栄養価が高い?
良い土壌で育てられた食物はより高い栄養価で有るべきですし、いくつかの研究ではそれを実証しているものもあります。しかしオーガニック認証を得るためには、より高い栄養価を必要としません。
つまり何らかの方法でテストができない限り、あなたが普段から購入しているオーガニック食品が本当に栄養的に優れているかどうかを知るのは難しいということ。なによりもオーガニック認証を得るために重視されるポイントは「生産方法」だからです。
そして、これらはオーガニックでないものよりもより多くの労働力と慎重な管理を必要としますし、当然のことながら高い管理コストがかかります。
まとめ
それぞれのオーガニック認証規格によって、どこを向いて評価しているのかが違うというのが事実。いずれにしても基本的には生産方法と生産者、この2つのどちらかに評価をしているのがオーガニック認証。
野菜など農産物の栄養価、安全性、いずれにもオーガニックの確かな優位性が保証されているものではなく、製品の付加価値を上げることが主だった目的になっている認証規格だと言えるでしょう。
評価の公平性という観点では、第三者機関の認証規格であるエコサートに軍配が上がるのではないでしょうか。食品でも美容製品でも、オーガニック製品を選ぶ際の参考にしてみましょう!