ロレアルが2019年3月13日に正式発売を開始した、今までとは全く違う「新しい染色理論」のヘアカラー、iNOA(イノア)についての最新情報!これが当たらなかったら日本から撤退する覚悟だというロレアルの決意が込められた、勝負に出る革新的な性能を持ったiNOA(イノア)。
「従来のヘアカラー」と「iNOA(イノア)」の違いを、サロン現場からの視点で解説していきます。
ロレアルのiNOA(イノア)と従来のカラーの違いは?
従来のカラーとiNOA(イノア)との最大の違いは、オイルが主成分だということ。従来のカラー剤へのオイルの配合率はせいぜい数%程度ですが、iNOA(イノア)の場合はオイルの配合率がなんと約60%にも及びます。
なおアルカリ剤は配合されていますが、モノエタノールアミンのみ。アンモニアを完全に無配合というのも珍しいことなので、驚きです。刺激臭のマスキングも大切ですが、そもそも全くないというのは大きな価値になるでしょう。
iNOA(イノア)の染毛プロセスは従来のカラーとどう違う?
従来のカラー剤とはキューティクルをアルカリ剤で膨潤させて、毛髪内部に染料とアルカリ剤を浸透させるもの。これが普通のアルカリカラーの染色理論です。
対してiNOA(イノア)は、オイルを毛髪の表面に付着させ、浸透圧によって水に溶けた染料とアルカリ剤を毛髪内部に浸透させるという全く新しいメカニズムを持ったカラー。言い換えると、オイルの中で逃げ場のなくなった水に溶けた染料を「髪の内部に押し込む」ようなイメージです。
つまり、キューティクルを開かせないままの状態で染料とアルカリ剤を毛髪の中に入れてしまえるという、今までのカラーの常識を覆すメカニズム。それにより、近年「毛髪表面のダメージの度合い」を示す際に用いられることの多い「18-MEA」の減少量が非常に少なくなります。
従来のアルカリカラー剤が一度の施術で40%の「18-MEA」を失わせるのに対し、iNOA(イノア)は僅か数%しか18-MEAが減少しないことに。これで髪が全く傷まないとは言えませんが、キューティクルの損傷に関しては従来のアルカリカラー剤の10分の1程度にまで抑えられているので、やはり凄まじい性能です。
気になるiNOA(イノア)の発色は?
イノアは「ダルトーン」が最も中心寄りに来ているので、低〜中明度での表現が得意なカラーということに。いわゆる「深みのある色味」を作るのが得意なカラーと言えるでしょう。
そこにオイルベースカラーならではの「仕上がりのツヤ」と、その「持続力」という強みが入ります。一応ライトナーも存在しますが、一度に持っていける最高明度は決して高くないので、ハイトーンカラーを作るのは不得意なカラーだと言えます。
そのため、ハイトーンカラーがメインの美容室は、iNOA(イノア)とどうお付き合いしていくか、やや難題になりそうな予想が。ただでさえ時間の必要なダブルカラーの時間が更に延びるというデメリットをどうするのかが大きな課題です。
iNOA(イノア)の3つのデメリットとは?
今現在判明しているiNOAの明確なデメリットは3つあります。サロンによっては導入する際に高いハードルとなる内容なので、しっかりとここで把握しておきましょう。
- 塗布後の放置時間の長さ
- 1剤の量が少なくて高価
- すでに傷んだ髪は良くならない
①塗布後の放置時間がかなり長い
一つ目のデメリットは塗布後の放置時間が非常に長いこと。「浸透圧を利用する」という仕組みのカラーのため、従来のような加温処理によって浸透を促進させることができないという弱点が。つまり、何をどうしても35分の放置時間が必要になってしまうということです。
ちなみに、トーンアップはできませんが、ダメージレスで透明感のある寒色系が僅か「10分以内」で発色する(株)ナンバースリーの「ヒュウグロス」という製品も要確認。ダブルカラーの時間・髪のダメージを大幅に減らしてくれる優れものです。
②1剤の量が控えめなのにお値段高め
二つ目のデメリットは、1剤の量が少なくて高価なことです。一本60gという、他のメーカーから発売されているカラーと比較すると控えめな容量。
実は「1剤一本60g」は本国フランスでの標準量。つまり「1剤一本80g」が標準量の、日本向けの容量になっていないまま発売されたカラーだということになります。
③傷んでいる髪のダメージ補修はできない
最後に三つ目のデメリットとして「髪の傷みを減らせることにはなるけれど、既に傷んだ髪を良くできる訳ではない」ということが挙げられます。モノエタノールアミンと過酸化水素による「髪内部の酸化ダメージ」は存在することになるので、ノーダメージではないです。
日本では薬機法の関係で使えない表現ですが、本国フランスでは「ノーダメージカラー」と謳われるほどのロレアルの自信作。せっかくならばダメージの予防ではなく、すでにダメージが進んでしまった髪の「補修効果」まで欲しかったなと思ってしまいます。
なおアルカリ剤がモノエタノールアミンのため、「発色の鮮やかさ」という点ではアンモニアを使っているカラーよりも劣ってしまうという現実も。つまり、イノアはアンモニアが使われているカラーよりも鮮やかな色味を作るのが苦手なカラーということです。
それを「深みがあって、ツヤがあって…」といった表現で置き換えることも可能。ですがはっきりと言うならばiNOAは他のカラーと比較した時、「彩度の高い色が出せない」ということに繋がります。
まとめ
iNOAはキューティクルがダメージしない×放置時間が長い×ミディアムトーン中心の仕上がりという特徴を持ったカラー剤。この特性は、来店サイクルが短いお客様で、ダメージへの意識が高い層のお客様にはとても喜ばれるかもしれません。
しかし、コストの高さの問題、色持ちはいいけれども発色は鈍いという問題、「時短」に価値のある現代で「施術時間が長い」など、使いこなしには頭を使う必要がある商材。
一気に入れ替える前に、デメリットも含めて総合的に検討して判断したほうが良さそうです。