よくメディアで耳にするマクロビオティック。「マクロビ」の略称も定着していますが、どのような内容の食事のことを指すのでしょうか?
そしてマクロビを実践するにあたって、健康上のリスクなどはないのでしょうか?マクロビを実践する事で健康的なダイエットが出来るのでしょうか。
まずマクロビオティックとは、日本発祥の玄米菜食をベースにした食事療法です。
マクロビを実践するにあたっては健康上のリスクも考えられますし、痩せる為の食事法ではありません。
健康管理士としての観点から、マクロビが近年注目されている背景、マクロビ発祥の歴史も踏まえて解説していきます。
マクロビの二つの原則と、ベジタリアンとの違い
マクロビオティックは玄米菜食なので、もちろん動物性の食品は基本的に排除します。
ただし一般的なベジタリアン(菜食主義)と違うのは、
- その土地で採れたものがその人の体を養う(身土不二)
- 食材を生成したり根や皮を取り除いたりせず、一つの生命として丸ごといただく(一物全体食)
といった東洋的な考え方がベースにある点です。
また、カロリーや栄養成分をベースにしている栄養学とは異なり、食物を
- 陰性
- 陽性
- 中庸
の3つに分けて捉えている点も特徴的です。
マクロビで日本人が必要とされるのは、根菜などの陽性食品
例えば食材で言えば、ナスやトマトは陰性なので体を冷やす作用があり、夏に食べるのが向いています。これに対し、にんじんやかぼちゃは陽性なので体を温めます。
日本人は体質的に陰性の人が多いと言われますので、食べ物の旬を意識しながら、根菜など、陽性の食品を多く摂るのが良いとされています。
白砂糖や牛乳、化学調味料は陰性に属するので、日本人がマクロビを実践する場合、これらの食品は避けた方が良いことになります。
マクロビとは「食生活の知恵」を体系化したもの
マクロビは、栄養学とは根本的に違った形で食生活を捉えています。
栄養学では食べ物を栄養成分という「部分」でつなぎ合わせて栄養バランスを取ろうとするのに対し、マクロビの場合は食べ物という「全体に宿っている生命」にフォーカスを当てています。
つまり、食べ物の「旬」や「鮮度」、「栽培法」などの質にこだわり、感覚や経験によって受け止められてきた「食生活の知恵」を体系化したものがマクロビオティックだと言えます。
マクロビの発祥は日本の明治時代後期から
マクロビの歴史は意外に古く、提唱されたのは日本の明治時代の後期で、戦前から戦後にかけて日本から海外に広まっていきました。
とりわけ海外では「禅」とともに日本文化として受け止められ、その過程ではマドンナやトムクルーズのような著名人にも実践され、評価されました。
マクロビ=日本の伝統食ではない
ただし、日本の伝統食=マクロビではありません。日本の伝統色は菜食主体でしたが、魚介類は常食していました。
そもそも、玄米が日本で食べられるようになったのは精米機が開発されて以降のことです。
それ以前は、脱穀の際に糠や胚芽の一部が削られてしまうため、分づき米(3分づき、五分づき米など)を食べていたと考えられています。
マクロビの普及は欧米食へのアンチテーゼ
近代の先進国で食の欧米化が進んだことにより、肥満や生活習慣病の問題が取り沙汰されるようになりましたが、その過程で肉類や乳製品、生成された穀物を中心にした欧米食へのアンチテーゼとして、マクロビが注目されるようになりました。
やや極端な傾向の考え方なので、それによるリスクも一緒に知っておく必要があります。
日本でマクロビを実践する場合の健康上のリスク
マクロビの根底にある、「その土地でとれたものがその人の体を養う」という考え方は素晴らしいと思いますが、日本の野菜の栄養価は外国に比べて低いと言われます。
そのため、日本で完全菜食を行う場合、必須栄養素の欠乏リスクに注意を払う必要があります。
特に一切肉を摂取しない場合、ビタミンB12を食物から摂ることができません。
人間はビタミンB12を体内で合成することもできないので、その場合はサプリメントによる補給を行う必要があります。
食事療法を実践して栄養不足に陥ってしまっては本末転倒だと思うので、この辺りはどうなのかなー…と思います。
マクロビがダイエットに向いていない理由
マクロビは菜食なので、必然的にカロリーは抑えられるため、結果としてダイエットにつながるかもしれません。
でも、動物性食品を採らないことによる必須栄養素の不足というリスクが存在する事は念頭に置いて実践しなければなりません。
マクロビを実践して体に不調が出る場合は、無理をせず魚や肉などの動物性食品も通常通りに摂るなど、必要に応じて柔軟性のある食事法に切り替えて行った方が安全です。
個人的には、日本でのマクロビの実践はあまり現実的ではなく、健康的な食事療法にするのは難しいと考えています。
ダイエットが目的なのであれば、ただでさえ我慢が多いダイエットに更なる制約を加えてしまうことになりかねないので、あまりおススメはできません。
まとめ
- マクロビは「身土不二」、「一物全体食」という東洋的な考え方の入った玄米菜食の食事療法
- 日本人がマクロビを実践する場合、根菜などの陽性食品を多く摂るのが良いと言われている
- マクロビは食物の旬・鮮度・栽培法などの食生活の知恵を体系化したもの
- マクロビは日本発祥の伝統文化として海外で普及・発展していった考え方
- マクロビは日本の伝統食とは違い、欧米食が引き起こす生活習慣病へのやや極端なアンチテーゼ
- マクロビは野菜の種類や栄養素の少ない日本で実践するには、必須栄養素欠乏のリスクも伴う
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