[su_box title=”ドライカットに関するお悩み相談” box_color=”#937e8e”]以前お世話になっていた美容師さんは髪を乾かした後、ハサミを滑らせていくような切り方をする人で、ヘアスタイルの持ちが大変良くてお気に入りでした。
引っ越した先の美容室では全部濡らしたままで切り終えるのですが、以前よりも髪型が再現しにくくて困っています。
その後も何軒か美容室を渡り歩いていますが、髪を濡らしたままで切る美容師さんがほとんどです。 ある美容師の方には「乾いたままでカットするなんて、ただの手抜きだし髪が傷むよ」と言われましたが、本当のところはどうなんでしょうか?
私の髪にはドライカットが向いていたように感じるのですが、そもそも濡らしたままカットするのと乾いた髪でカットをすることで何が変わるのか、違いを教えてください。[/su_box]
ドライカットとは名前の通り、髪を乾かしたままのドライ状態で行うカット技術のことを意味します。私が20代の時に習得したNYドライカットと呼ばれるカット技法がドライカットのブランドとなっていますが、実際に使われるドライカットの種類は様々です。
髪を濡らしたまま切っていくウェットカットとドライカット、それぞれで利点と不利点が存在するもの。しかし一般の方はドライカットとウェットカットの違いがよく分からないという方が多い傾向です。
ドライカットが高度な技術だと言われたり、手抜きカットだと言われることもありますが、実際はどのような技法なのか、ドライカット4つの種類とウェットカットと比較した際の違い、それぞれのメリットデメリットまで網羅して解説していきます!
ドライカットは手抜き技術で髪が傷む?
安価なカット専門店は時間短縮のために濡らさない・乾かさないドライカットを用います。細かな生え癖を調節する目的や、ヘアスタイルの再現性を高めるために行われるドライカットとは全く違う技術です。
ウェットカットにはウェットカットの難しさがありますし、ドライカットはまた違った意味での難しい部分があります。どちらのカットを難しいと感じるかは美容師の慣れ次第です。そのため、ドライカットは決して手抜きの技術ではないですし、髪が必要以上に傷む技術でもありません。
ドライカットの種類は4つある!
乾いた状態の髪をカットするのが、全てのドライカット技術に共通する大前提。しかし何を使ってどう切るのかによって、得られる効果は全く変わるのです。ここでは一般的によく用いられる、4つのドライカット技法について解説します。
- 通常のハサミを使うドライカット
- セニング(スキばさみ)を使ったドライカット
- レザーを使ったドライカット
- NYドライカット
通常のハサミを使うドライカット
ハサミを滑らせるように切っていくスライドカット(スリザリング)や、左手に持った髪の毛を少しずつ落としながら切っていくストロークカットが最もよく使われる方法です。髪の切りすぎを避けるために、笹刃という丸みを帯びた刃を持つハサミが好まれる傾向ですが、敢えてカットの正確性重視のために、髪を逃がさず切れ味の良い剣刃を使う美容師も存在します。
セニング(スキばさみ)を使ったドライカット
ウェットカットでのセニングに比べて髪を切り落とす割合が減るため、毛量の微調整に向いています。なお、すきバサミでカットするということは、ウェット・ドライに関係なく、繋がりのない短い髪をたくさん作ることです。
もしもくせ毛で繋がりのない、短い髪をたくさん作ってしまうと、まとまりにくくて持ちの悪い髪型を作る原因になってしまいます。
レザーを使ったドライカット
切れないレザーでのドライカットは、毛根が痛い上に髪もひどく傷んでしまいます。レザーを使ってドライカットを行う場合は髪を滑りの良い状態にしてから行うのが鉄則。
なおかつ、一人のカットを終えるまでに3~4回は替え刃の交換を行う必要があり、髪に負担をかけないためには熟練の技術も必要です。
NYドライカット
私も習得していますが、一つのブランド的なドライカットとなっているのがこのニューヨークドライカットというやり方。分け取ったブロックごとにストレートアイロンで丸みを付け直しながら切っていく工程が、非常に特徴的な技術です。
NYドライカットのやり方
ニューヨークドライカットは髪を点と点でつなぐように切っていくのが特徴的なのですが、それ以外にも独特の手順を踏みます。ニューヨークドライカットのやり方(手順)は簡潔に並べると以下の通りです。
- シャンプー後、ハンドブローで完全ドライする
- 切り始める場所はヘアスタイルにより異なるが、分け取ったブロックの毛束の長さに応じた丸みを付けてストレートアイロンをかける
- 髪をつまみ上げ、切れ味の良いハサミの刃先だけを使ってカットする。ハサミは滑らせず、しっかりと開閉しながら点で切る。
- 長さを切ったら、再度ストレートアイロンで丸みをつけなおす
- ②~④の手順をすべてのブロックで繰り返していく
つまり、ハサミを入れるごとにストレートアイロンを入れなおすカット技術ということです。実際どのようにカットしていくのかについては割愛しますが、普通にウェットカットをする時の2~3倍時間がかかります。
どのようにカットをする時にも言えることなのですが、手先の作業ばかりに集中して、ゴールの髪型から意識が逸れては本末転倒。技術力以外の問題でカットの失敗を招いてしまいます。
ドライカットとウェットカットの違いは何?
乾いた髪は切ろうとしても髪が逃げてしまいやすく、真っすぐ切るためにはハサミを引きながら切る必要があります。そして濡れた髪には乾いた髪よりも長くて、柔らかくなるという性質があるのです。
仕上がりの長さを読むのは、ドライカットがやりやすい
特に長さの切りすぎが問題になるのは、一目で切りすぎの失敗が分かってしまう前髪。ドライカットは髪の落ちる位置で、髪を引っ張らずカットをすることで、狙った長さピッタリでカットしやすいです。
どちらが切りやすいと感じるかは、美容師の慣れ方次第
ドライカットはウェットカットに比べて、髪が逃げやすいことに慣れる必要があります。ドライカットは慣れないと髪が滑りやすく、手を切ってしまいやすいですが、これも慣れによってなくなる問題。
つまりドライカットができることと美容技術の熟練度に相関性はなく、ウェットカットとは違う髪の扱い方に慣れる必要があるのです。
ドライカットでもウェットカットでも、髪の傷み方は切れ味次第
切れ味の悪いハサミやレザーを使ったカットは、ウェットカットでもドライカットでも髪を傷めやすくなります。事実、切れ味が良い刃を使って余計な力を入れないドライレザーカットでは、髪が全然傷まないです。
ウェットカットが持つ5つの利点(メリット)
ヘアスタイルの土台を作るカットのことをベースカットと呼びますが、ベースカットはウェットカットの方がやりやすく感じる美容師が多いです。ベースカットはドライカットでもできるのですが、乾いた髪の滑りやすさはベースカットをより難しくするでしょう。
ここではウェットカットならではの利点(メリット)を5つ挙げて説明します。
- 一気に長さを切る時、切り残しが出にくい!
- 硬い髪のベースカットがやりやすい!
- 生え癖以外のクセをリセットしてベースカットできる!
- チョップカットのなじみ具合がドライカットより良い!
- 一度の動作で、髪をたくさん減らしやすい!
一気に長さを切る時、切り残しが出にくい
濡れた髪は乾いた髪に比べて滑りにくいため、特に長さをたくさん切る時は、切り残した髪の毛が後から出にくいです。
硬い髪のベースカットがやりやすい
水分の少ない髪は硬くなるため、もともと硬い髪はウェットカットの方が圧倒的に切りやすいです。より馴染んだ切り口を好む場合は、髪が濡れた状態でのレザーを使ったベースカットが向いています。
生え癖以外のクセをリセットしてベースカットできる
美容室に来店したときの髪は、生え癖以外にも直し切れなかった寝ぐせや乾かし方による変な潰れ癖などがあるものです。先にシャンプーをしてからのウェットカットでは、生え癖以外のクセは全てリセットされた状態になります。
チョップカットのなじみ具合がドライカットより良い
ハサミを縦に入れて切るカットのことをチョップカットと呼びますが、実は濡れた髪にチョップカットを施したほうがよくなじむのです。ドライカットのチョップカットよりもいい加減なギザギザで切ったとしても、乾かすと十分になじみます。
一度の動作で、髪をたくさん減らしやすい
ウェットカットの方が、セニング(すきバサミ)を入れる場合も、レザーで髪の量を減らす場合においても、ドライカットより一度のカット動作で減らされる髪の量が多いです。
しばらくカットをせずに放置していたような超重い髪をしっかりと減らすには、ウェットカットが向いています。
ウェットカットが持つ3つのデメリット
多くの美容師が切り慣れており、切りやすさの面でアドバンテージがあるウェットカット。しかし濡れた髪には乾いた髪にはない重みもあるため、それによって3つのデメリットも発生してしまうのです。
- 髪が乾くと長さが変わり、切りすぎになることがある
- 髪が濡れていると、大まかな毛量までしかわからない
- ウェットカットだけでは対応の難しいくせ毛がある
髪が乾くと長さが変わり、切りすぎになることがある
例えばウェットカットを用いて、あごラインぴったりの長さで前下がりショートボブを切った場合、仕上がりの長さはあごよりも確実に短くなります。髪が乾いたときにどのぐらい持ち上がるのかを予想して、一発でジャストの設定に切りそろえるのは至難の業です。
髪が濡れていると、大まかな毛量までしかわからない
カット中における毛量とは、髪に指を通した時の感触で判断するものです。ある程度までは濡れた髪でも毛量が分かりますが、乾かして毛流れの影響を受けることで、想定以上の誤差が出ることもあります。
ウェットカットだけでは対応の難しいくせ毛がある
くせ毛の中には髪が濡れているときにあまり見えず、乾かすと出てくるタイプのくせ毛があります。膨張するタイプの髪によく見られる現象ですが、これはウェットカットよりもドライカットに重点を置いたカットの方が、より適していると言えるでしょう。
ドライカットの持つ5つの利点(メリット)
自分で乾かした時に似た状態でカットを行うため、細かな調整が可能になるドライカット。ラインを出すようなカットには不向きだと言われることもありますが、それはドライカットの切り方次第で解消できる問題です。
ここではドライカットの持つ5つの利点(メリット)について解説します。
- 切った時の髪の長さと仕上がりの髪の長さが一緒
- ドライ状態だと、左右で毛量が微妙に違っても調節可能
- スライドカットとストロークカットはドライカットの得意技
- ウェットカットよりも、難しい生え癖に対応しやすい
- 真っすぐなラインのドライカットには、バリカットが最適
切った時の髪の長さと仕上がりの髪の長さが一緒
顔周りなどはほんの数ミリ切りすぎるだけでも全然違う印象に変化するため、美容師にとっては責任の重いパーツ。微細な長さの調節はドライカットが最も得意とするポイントです。
ドライ状態だと、左右で毛量が微妙に違っても調節可能
日本人は上から見た時に時計回りの毛流れを持っている人が大半なので、左側の毛量が多くなりやすい傾向です。それが微妙な違いでも、乾いた髪は見た目と手触り、両方で毛量を確かめながらのカットができます。
スライドカットとストロークカットはドライカットの得意技
少しずつ様子を見ながら、切りすぎることなく髪を削いでいけるスライドカットとストロークカット。ペタンとしやすい髪を持ち上げたり、多い髪の量でもバランスを損なうことなくしっかりと減らすのも可能にします。
ウェットカットよりも、難しい生え癖に対応しやすい
前髪の割れや襟足の浮き上がり、つむじの割れやすさなどはウェットカットのみでは対応しにくい部分。髪がどのように動くのかを目視で確認しつつ、さらに精度の高い微調整ができるのはドライカットならではです。
真っすぐなラインのドライカットには、バリカットが最適
真っすぐ横に揃ったラインを作るのにドライカットが不向きだという意見もありますが、そんなことはありません。乾いた髪にバリカンを押し当てて切るバリカットは、ドライカットでも簡単にラインの出たスタイルを作れるカット技術です。
ドライカットが持つたった一つのデメリット
一気にラインを出したいならドライでのバリカットが使えますし、ストロークカットは一度の動作で切りおとす量をコントロールできる技術。慣れればほとんどデメリットのないドライカットですが、どうしても払しょくしきれないデメリットは美容師が怪我をするリスクです。
髪の滑りやすさに慣れないと、怪我をしやすい
ウェットカットでは、基本に忠実な動作を守っていれば手を切ることはほとんどありません。しかし乾いた髪の滑りやすさに慣れないと、美容師自身の怪我に繋がるのです。
引きの動作で行うスライドカットは、素早く行うと髪をつまむ動作と切る動作の順番が逆になり、指を切ってしまいます。ストロークカットもハサミが指の間際をかすめるので、左手の動作に慣れるまでは危険を伴うカット技術です。
再現性や持ちは、ドライカットの使用不使用とは無関係
気に入った髪型の持ちや再現性を叶えるのは、あなたの髪と相性の良いカット技法で、適切なカットが施されているかどうかです。必要に応じてウェットカットとドライカットを使い分けることで、再現性や髪型の持ちを最大化することができるようになります。
まとめ
自分で扱いやすい髪型とは、普段のあなたがどの程度まで髪型を作りこむのか、その度合いによって変わるものです。
寝ぐせを直す程度で終わる人と、コテ巻きが前提の人では必要なカットのやり方が全く変わります。
ニューヨークドライカットはストレートアイロンをかけてから行う特殊なドライカットなので、再現性という観点では強いくせ毛に不向きでしょう。
今回はやや専門的な内容となりましたが、内容の分からないサービスを受けるよりは、少し専門的でもサービス内容に詳しくなっておいたほうが良いと考え、このような内容に仕上げました。
髪が傷むのはドライカットでもウェットカットでも刃の切れ味が最も重要です。もしもプツプツと引っかかるような感触のある時は、美容師のカット技術に問題がある可能性がありますので、その場で伝えたほうが良いでしょう。