白髪の途中から、また黒髪に戻る髪の毛があるのをご存じでしょうか?
見た目はまるで「しま模様」のようで、白髪が黒髪に戻りかけているようにも見えます。
実はこういった「黒髪に戻る白髪」は実在するのです。
例えるならば、黒に戻る白髪とは切れかけている電球のようなもの。
今回は白髪と黒髪の中間とも呼べる、途中から黒に戻る白髪のメカニズムを、現役美容師の筆者が解説します。
そもそも、白髪と黒髪の違いはなに?
白髪は加齢とともに黒髪から白髪へと変わっていく過程で、違う素材に変わったと感じられます。
ところが本来髪の毛は「透明」で、日本人の場合は黒く見えるメラニン色素が多いだけです。
髪の毛の内側にある、メラニン色素が光を遮ることで、髪は黒く見えています。
そしてメラニン色素は、毛根部にあるメラノサイト(色素細胞)で作られています。
メラノサイトで作られたメラニンが毛母細胞へと送られることで、黒髪として目に見える仕組みです。
白髪は「透明の髪」に限りなく近い
メラノサイト(色素細胞)が正常に働いている時は、メラニン色素が髪の毛根にきちんと取り込まれることで、黒い髪の毛が生えます。
何らかの原因でこの機能が低下してしまうと、メラニン色素が生成されない・または定着できないことで白髪が発生するのです。
そして白髪とは黒髪が機能を失ったわけではなく、メラニン色素を作る機能にエラーが起こっています。
言い換えると、もともと透明だった髪の毛に戻っている状態です。
髪の伸び方と白髪のでき方は無関係
髪が新たに作られて「伸びていく」プロセスと、「メラニン色素を合成する」プロセスは一緒に行われています。
たとえメラニン色素の合成がうまくいかなくても、髪の長さだけは伸びていくので、白髪になったので髪も弱る、というわけではないのです。
なお髪には神経や血管が通っていないので、一度作られはじめたあとの髪の毛は、頭皮から栄養を取り入れられません。
つまり、メラニンが合成&補給されるタイミングで髪が作られれば黒髪になり、メラニンの合成されないタイミングで作られた髪は白髪になるのです。
一度白髪になると、二度と元には戻らない?
白い髪の毛が途中で黒くなるのはよくあることで、およそ40%の白髪は黒髪に戻る可能性があります。
逆に、白くなったかと思えば黒くなるという過程を繰り返す髪も存在しているのです。
近年の研究では、白と黒の中間にあたる「灰色の髪」も存在していることが判明しました。
要するに、黒髪から白髪になるだけではなく、黒髪から灰色の髪の毛に変化する人も一定数はいるのです。
なぜメラニン色素は作られなくなってしまう?
現状では、メラノサイトからメラニン色素の供給が止まってしまう原因は、はっきりとわかっていません。
ですが、老化や栄養不足・疲労やストレス・血行不良や甲状腺機能の低下などが白髪増加の一因と考えられています。
白髪予防のファーストステップとしておすすめなのは、食生活をケアして頭皮まで栄養が行き渡る状態に戻すことです。
完全な白髪になるのを防ぐために、必要なものとは?
メラニン色素を作り出すのに必要な栄養素は、ビタミン類やミネラル・たんぱく質などがあります。
過度なダイエットや偏った食生活は、血行不良が原因の白髪を誘発しやすくなってしまうので、注意が必要です。
髪は毛細血管から栄養を得ているので、食事ケアと併せて有酸素運動やストレッチ、マッサージで末端の血流ケアを行いましょう。
特に、頭皮マッサージは毛根の働きを活発にできますので、指の腹を使ってやさしくほぐすように行います。
ストレスは白髪の増加にもデメリットが
ストレスは、ため込んでしまうと交感神経が優位になることで、体から緊張が解けません。
それによって頭皮の血行不良⇒髪の栄養不足を起こす、という負のスパイラルへ向かってしまいます。
さらに、ストレスが原因で活性酸素が発生するので、メラノサイトを傷つけるうえ、髪の新陳代謝を下げるなどのデメリットも。
心身にとって健康的な生活こそが、白髪予防の原点になるライフスタイルです。
「なりかけ白髪」を黒髪に戻す、3つの具体的な対策
白髪になり切っていない髪は、2つの対策でケアされる可能性があります。
1つは紫外線のあたりすぎに気をつけること、2つめは洗浄力が強いシャンプーなどの外的な刺激要素を減らすことです。
最後3つめは、「白髪に効果がある」と実証されている成分を頭皮へダイレクトに補給する方法が挙げられます。
現在も「ヘマチン」や「メリタン」といった成分に効果が確認されているうえ、2021年には新たな白髪ケア成分が日本でも製品化される見通しです。
今、目に見えている髪から「履歴」を分析する
人間の髪は個人差があるものの、1日に平均で0.3mmほど伸びています。
そのため根元が2cmほど黒くて先端部分が白い場合は、その2ケ月ほど前からメラニンの合成が再開されたということです。
そして、黒髪が復活する仕組みには3つの可能性があります。
- 色素細胞の一つであるメラノソームの数が正常になった
- たんぱく質のチロシンと活性化する「チロシナーゼ酵素」が活性化した
- メラニン色素を毛母細胞へスムーズに運べるようになった
まとめ
今回の内容は、私が現役の美容師として20年間、髪を研究してきたひとつの考察です。
同じに見える「黒髪」にも濃さの違いがあり、髪色が標準よりも黒い人は、あまり白髪ができずに髪全体の黒さが薄くなります。
言い換えると、髪全体がブラックからチャコールグレーに変色するイメージでしょうか。
日本人の白髪には特有の「にごり」があるので、透明というよりはチョークのような白に見える人が多くなります。
いずれにしても、白髪から黒に戻る髪は実在するということです。
基本的な生活ケアで「戻らない白髪」を阻止できる可能性がアップするので、今のうちから髪に良いライフサイクルを習慣化させていきましょう。