巷にあふれる「髪質ケア」の謳い文句と、近年のインスタグラムで頻繁に見かけるCMのようなツヤツヤのロングヘア。それらを目にすると、女性なら誰しも一度は、艶のあるサラサラの髪に対する憧れで心が揺れることでしょう。
髪のツヤが出ない原因は一般の方が想像するよりも複雑なのですが、そもそも髪質ケアと名乗るメニューでは、どのような効果が得られるのでしょうか?
今回は髪質ケアと呼ばれるメニューの内容とあなたが得られる効果、髪質ケアの種類が違うことによって、どのようなデメリットが起こり得るのか、2019年8月現段階で判明している情報をまとめて解説します。
髪質ケアストレートの内容と効果
昔から行われている縮毛矯正には、以下のような3つの問題点がありました。
- 髪への負担が大きく、繰り返した時の傷みがひどい
- 不自然なくらい真っすぐなピンピンストレートに仕上がる
- 真っすぐになっても、ツヤが感じられずパサつく
髪質ケアストレートを行う美容室によって、これら3つの問題点をどのように解消するのか、その内容は実に様々です。従来の縮毛矯正と比べた時、髪質ケアストレートでは以下に挙げた6つのポイントによって縮毛矯正をグレードアップさせています。
- 縮毛矯正に使われる薬剤を、以前より性能の良いものに変える
- 縮毛矯正の前後や途中で、仕上がりの髪質を良くするための成分を髪に入れる
- ツインブラシの使用、冷風ドライなどアイロン前の乾かし方を改良する
- ストレートアイロンを高性能のものに変える
- ストレートアイロンの使い方(アイロンワーク)をケアする
- 後ほど解説する、酸熱トリートメントと縮毛矯正を組み合わせる
酸熱トリートメントと縮毛矯正の違いについてはこちらの記事でも解説しています。
縮毛矯正として行う髪質ケアのデメリット
縮毛矯正とは、髪の内部をスクラップ&ビルドするのが基本となる技術。つまり縮毛矯正とはきれいに見える髪を作るために、一度髪の内部を壊してから作り直す技術です。
縮毛矯正である以上、パーマ液やアイロンの高熱など、何らかの形で髪への負担はかかります。しかし表面にチリチリした髪が目立つ健康毛よりも、上手な縮毛矯正がかかった髪の方がきれいな髪に見えるのも事実です。
酸熱トリートメントによる髪質ケアの内容(やり方)と効果
従来の美容院で行うトリートメントでは、アミノ酸やケラチンPPT(髪の構成成分)を髪に補給することで、髪のダメージを集中ケアするという内容でした。それに対し酸熱トリートメントによる髪質ケアではグリオキシル酸・レブリン酸・サリチル酸など特殊な酸が利用され、主にグリオキシル酸という成分の持つ力を用います。
従来のトリートメントが髪に栄養補給をする目的で行われていたのに対し、酸熱トリートメントでは酸による髪質の変化を利用する内容です。強い酸で収れんさせた髪に高熱を加えることによって髪の中で化学反応が起こり、もともとの髪とは違った髪質になる変化が起こります。
酸熱トリートメントの効果によって早く乾く髪質&チリチリ毛の目立ちにくい髪質に変化する
またグリオキシル酸という酸の影響により、髪の傷みによってハリコシが失われた髪に再びハリコシが戻る効果が得られます。ハリコシの戻った髪は髪の中に水分を吸い込みにくくなるため、髪が早く乾くようになる効果も同時に得られるのです。
グリオキシル酸はまだ不明なことが多い謎の成分なのですが、ハリコシを取り戻す作用と同時に髪のクセを伸ばす効果も併せ持つ成分。大きなうねりや髪の広がりはかなり和らぎますし、表面に出てくる嫌なアホ毛(チリチリ髪)を真っすぐにして目立ちにくくできます。
酸熱トリートメントで髪質ケアを行った場合の5つのデメリット
2週間でトリートメントの実感がなくなってしまうと言われるメニュートリートメントに比べ、酸熱トリートメントは持続性の高さが特徴的です。しかし酸熱トリートメントに使われるグリオキシル酸という成分は、以下のような5つのデメリットをもたらします。
- 強い酸による影響で、染めた色が抜けてしまう!
- 酸熱トリートメント直後のカラーは色が入りにくい!
- パーマのかかりが非常に不安定な髪になる!
- 高温で行う髪質ケアはかかりすぎの縮毛矯正のような出来になる!
- 自分で乾かした時、インスタグラムの投稿と同じ見映えにはならない!
強い酸による影響で、染めた色が抜けてしまう
これはヘアカラーをしていない黒髪には起こらないデメリットで、暗く染まった髪色を傷めずに明るくする脱染にも活用できる特徴です。染めた髪色が抜けて、明るくなるのが困る人にとっては問題となるデメリットでしょう。
酸熱トリートメント直後のカラーは色が入りにくい
ヘアカラーは酸性に偏った髪で発色しにくいという性質があります。ヘアカラーと酸熱トリートメントを同時に行う場合は酸熱トリートメントが先ですが、後で行うヘアカラーの色が入りにくくなるというデメリットがあるのです。
パーマのかかりが非常に不安定な髪になる
酸熱トリートメントで使われるグリオキシル酸という成分は、ある意味人工の髪を作り出すような技術。パーマとは髪の傷み方に正直な結果が出る技術で、酸熱トリートメントをした後の髪はパーマのかかり方が予測しにくくなります。
高温で行う髪質ケアはかかりすぎの縮毛矯正のような出来になる
不明なことが多すぎる酸熱トリートメントで、私が検証を繰り返して判明していることの一つがアイロンの温度設定による結果の違いです。例えば220度のストレートアイロンで酸熱トリートメントを行うと、まるで不自然にまっすぐな縮毛矯正そっくりの髪が出来上がります。
結果が読みにくく、セルフドライではインスタグラムの投稿と同じ見映えにならない
縮毛矯正とは違い、最後の工程で高温のアイロンをかける酸熱トリートメント。すぐに濡らすと特有のニオイが出るため、次に髪を濡らして乾かすまでは実際の結果が分からないのです。
酸熱トリートメントの最後にストレートアイロンを入れることで、まるで鏡面のように輝く圧倒的な髪のツヤ感が得られます。しかし自分でドライヤーを使って乾かした時の髪は、鏡面レベルまでのツヤツヤサラサラにはならないです。
サイエンスアクアと水素トリートメントは酸熱トリートメント?
いずれも酸熱トリートメント特有の成分であるグリオキシル酸が配合されているため、酸熱トリートメントの効果を確実に利用している技術です。水素トリートメントは水素の輸入専門業者でも安定保管が困難なはずの水素、サイエンスアクアは謎の多い特殊なアルカリ電解水を使うのが特徴的ですが、その後の経過を見ている限りは酸熱トリートメントとの明確な違いが確認できません。
なおサイエンスアクアについての具体的な内容についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
100万円の髪質ケア専門店がやっている内容は?
ビフォーアフターの画像を確認する限り、髪の形そのものが変わっているため、パーマ液(還元剤)もしくは酸熱トリートメントの作用を利用している可能性が濃厚です。大元の美容室は協会ビジネス化することで、加盟した美容室に独自カリキュラムを受講させています。
医師の監修による美髪を作るための食事指導まで内容に含まれており、「お客様に守っていただくことがございます。」との文面もあったので、ライザップのようにコミットさせて高額販売を行う販売手法による高値売りです。
酸熱トリートメントの髪質ケア1回でどのくらい効果はもつ?
配合されたグリオキシル酸の濃さが酸熱トリートメントの効果を左右すると言われます。資生堂の発売した「サブリミック」は、今までの酸熱トリートメントと違ってストレートアイロンによる熱入れ不要で効果が出るとのことです。
サブリミックは高熱を使わないので別扱いとして、他の酸熱トリートメントは使用するアイロンの温度が上がるほど効果の持ちが長くなります。アイロンの温度設定は200度が一般的で、その場合では1か月~1か月半前後がトリートメント効果の持続期間です。
髪質ケア「チューニング」の内容と効果
これは「トゥーコスメ」という商材を使ったアイロン不使用の髪質コントロールメニューです。システアミンという有名なパーマ液の成分を利用することにより、アイロンを使わないストレートパーマのような効果が得られます。
薬剤を塗った後の放置時間が短く、同じ日にヘアカラーもできるのが利点です。
チューニングを繰り返した場合に想定できるデメリット
縮毛矯正や酸熱トリートメントと比較すると自然な髪にできる、チューニングを利用した髪質ケア。とはいえパーマ液を用いる髪質ケアなので、無計画に繰り返すと髪の傷みが深刻になります。
まとめ
いずれの髪質ケア技術においても生えてくる髪の質を変える効果ではなく、今生えている髪の見栄えを良くする効果を狙う技術です。
現状で髪質ケアとは、髪を健康にする技術というよりは、人工的に髪の整形をするような内容と効果。効果が持つ期間はずっとではなく一定期間です。
髪の形が変わっている場合は、パーマ液もしくは特殊な酸の効果を利用した髪質ケアなので、それに伴ったデメリットや不確定要素もあることを知っておきましょう!