美容室でカラーをした方が仕上がりが良いのはわかっているけれど、美容院に行くお金と時間がないからセルフカラーをしています。
髪はパサパサ、ゴワゴワしているかもしれないですけど、美容室で染めてもギシギシした仕上がりになったこともあるし、その違いがいまいちよくわからないです。
自分でセルフカラーしている方がコスパもいいし、好きな時間に染められるから続けたいんですが、そんなにセルフカラーと美容院のカラー剤って違うものなんですか?
じゃあ、インターネットで業務用のカラー剤を買って染めれば、それでもいいってことですよね?
美容院で使っているカラー剤で染めれば、髪が傷まないと思っている方が大変多い印象です。しかし実際に髪を染める基本的なメカニズムは、市販のヘアカラーも美容院のヘアカラーも一緒なのです。
そのため使い方を間違えてしまうと、美容院で使われるへアカラーでも髪をひどく傷めてしまうリスクがあります。なおセルフカラーでは、時間と場所の制約を受けずに髪を染められるのが大きなメリットです。
今回は市販のヘアカラーと美容院のヘアカラーは何が違って、どのように仕上がりや髪の傷み具合で差が出るのかについて、詳しく解説していきます!
市販のセルフカラーと美容院のカラーは、基本的に一緒
カラー剤は染料の性質によって法律上で分類分けされていますが、市販のヘアカラーと美容院のヘアカラーは、医薬部外品>永久染毛剤>酸化染毛剤という全く同じカテゴリーに属するものです。ただし、自分で染める前提で作られている市販カラーと、プロが塗る前提で作られている美容院カラーでは、製品設計上で大きな違いがあります。
- 市販品は色ムラの「濁しかた」がうまい
- サロン品は「塗り分け」ありきの作り
1.市販のセルフカラーは自分で塗ってもムラが目立ちにくい仕様になっている
自分で髪を染める場合、美容院で塗ってもらう時のように細かく塗り分けていくことは技術的・時間的に難しいです。それを考慮して、市販のヘアカラーは一つの薬剤である程度適当に塗っても、色ムラが目立ちにくい製品設計が施されて2います。
カラー剤の硬さもゆるくて髪全体に塗りやすいものが多く、アンモニアのにおいも抑えられているものが多いので、市販カラーはカラーを塗るときの操作性や使用感の良さに配慮した製品が多いです。
2.美容院のカラー剤は「塗り分け」をするのが前提で作られている
市販カラーに比べると、美容院のヘアカラーは硬めのクリーム状のものがほとんど。美容院カラーをセルフカラーで使うと大変塗りにくく感じますが、これはカラー剤の正確な塗り分けをするために必要な硬さなのです。
そして発色を良くするため、市販品とくらべてアンモニアの使用量が多めになっているのも特徴的な違い。アンモニアの配合されていないヘアカラーはツンとした嫌なにおいがしない反面、色の鮮やかさが劣るというデメリットも併せ持ちます。
髪の傷み具合に合わせて薬剤を使い分けする必要があるため、根元の新しく生えてきた髪に使うカラー剤と、すでに染まって明るい部分でカラー剤を分けて使うことが多いのも大きな違いです。
美容院で染めても髪がギシギシゴワゴワする4つの原因
本来、塗り分けを駆使しながら繊細な調整をする美容院カラーで染めていると、髪の傷みはかなり抑えられるものです。美容院で染めているにも関わらず髪の傷みがひどい場合、以下に挙げた4つの原因が考えられます。
- 染めてくれる美容師が髪のダメージに無頓着
- すでに暗く染まっている髪を明るくした
- 塗り分けと薬剤選定をミスしている
- 美容院でカラーをする前から既に髪が傷んでいる
①染めてくれる美容師が髪のダメージに無頓着
髪を今よりも明るくする場合は大なり小なり髪の傷みが生じますが、美容師のヘアケアに対する意識は個人差が大変大きいものです。その場で希望通りの髪色が作れればそれで良いと考える美容師もいれば、可能な限り髪の傷みを抑えて染めようと考える美容師の両方が存在します。
髪の傷みを最小限に抑えてくれて、希望の髪色もかなえてくれる美容師が一番良いと思うかもしれません。しかし現実ではヘアデザイナータイプでヘアケアに無頓着な美容師か、ヘアドクタータイプでデザイン性よりもヘアケアを重視する美容師のどちらかが多い傾向です。
②すでに暗く染まっている髪を明るくした
髪の不調を訴える人で最も多いケースは、黒染めや髪色戻しなどで暗く染まった髪を明るくした人です。もともと明るかった髪を暗く染め直し、また明るくするのは髪にかなりの負担がかかる行為。
暗い地毛を少しだけ明るく染めるときの傷みと、暗く染まった髪を少しだけ明るく染めるときの傷みは全く違います。暗く染まっていると髪の傷みを自覚しにくくなるので要注意です。
③塗り分けと薬剤選定をミスしている
地毛の暗い部分と、すでに明るく染まっている髪を同じ一色に染めるには2つ以上の全く違う色のカラー剤を使用します。それで髪全体を狙った髪色に仕上げるためには、薬剤選定の専門的な知識と経験が不可欠。
塗り分け方が不適切だと髪の傷みはなくても色ムラの失敗を招いてしまいますし、薬剤選定のミスは余計な髪のダメージを上乗せすることにも直結するので、大変シビアな部分です。
④美容院でカラーをする前から、既に髪が傷んでいる
美容院で染めるのと、自分で染めるのを併用している女性の割合はおよそ60%に及びます。美容室で染めるのを基本に、途中で場繋ぎ的にセルフカラーを行う人もいれば、セルフカラーがメインで、時々美容院できれいに染め直してもらおうと考える人もいるということです。
しかし塗り分けという概念のない市販のヘアカラーを髪全体に繰り返している人は、見た目よりも髪の傷みがひどい場合がほとんど。色ムラを修正するために、髪へ負担がかかるカラーを使うことが避けられないケースもあります。
美容師は自分の髪をセルフカラーするの?
自分で自分の髪を染める美容師もいますが、待ってでも他の人に染めてほしいという美容師が多いです。他人の髪を染める仕事をしているからこそ、適当に塗ると雑な仕上がりになると誰よりもよく知っています。
なおかつ、自分で正確にヘアカラーの塗り分けを行うのは技術的にも、タイムリミット的な意味でも不可能だと誰よりも理解しているからに他なりません。私自身、たとえ道具や環境がそろっていても、デメリットのほうが大きく感じてしまうので、自分で髪を染めたいとは思えないです。
美容室はセルフカラーをしたお客が来ると迷惑?
セルフカラーでドヨンと沈んだ色に染めあがっていたり、色ムラが激しい髪をきれいに染め直すのは、美容師にとって難易度の高い業務内容です。定期的に同じ美容院で染めている人の髪は、色と傷みが安定していますし、髪の状態に不確定要素が少ないので失敗しにくくなります。
つまり同じような色と明るさに染め上げる場合でも、難易度と自由度が全く違うことになるので、同じ料金をいただくならセルフカラーをしていない人を選びたいと思うのが一般的な美容師の本音でしょう。もともと傷んだ髪を修正する場合、色ムラの修正が成功しても髪の傷みは悪化するリスクが上がるからです。
これで「美容室で染めたせいで髪が傷んだ」と誤解されてしまったら、損な仕事を任された挙句にクレームまで言われることにつながりかねません。自由度が下がり、難易度は上がり、髪をさらに傷めるリスクもあるセルフカラーが迷惑ではないにしろ、嬉しいと思う美容師は少ないのではないでしょうか?
まとめ
市販のヘアカラーと美容院のヘアカラーは、全く同じメカニズムで染まるヘアカラー。最も違うのは、実は製品設計上の違いなのです。
自分で美容院のヘアカラーを購入して染めることもできますが、市販カラーよりも塗りにくいので、かえって失敗してしまうかもしれません。
どのようにヘアカラーと付き合っていくかは個人の自由ですが、自分がどのようなものを使って染めているのか、もしくは染められているのかを知っておくのは大事です。
髪の傷みや色ムラといった、望まない髪のトラブルを回避するために必要な知識となるでしょう。